重い重い
背負って歩いて
どこまでもどこまでも歩いていく
先の先などは見えなくて
ただただ
右の足より前に
左の足より前に
それを繰り返して
その繰り返しに意味があるのかと
独り言のように自分に問いかけては
数歩先の崖の底を覗きたくなる
真っ暗なのは知っている
ただただ
この背負った荷物に責任を押し付けて
不幸な事故だったと
あるいは独りで背負っていたんだね、可哀想にと
そして1番は……いや、止めておこう
崖を眺めすぎたのか
崖の向かいにある休憩所には気付かないまま
だいぶ歩みを進めてきた
足が痛い
1歩を踏み出す
一瞬片足になる
その瞬間がたまらなく怖くなり
引きずるように
ずるずると
じりじりと
考えがまとまらないまま
まるで身に覚えがない責任感に追いかけられていた
目指しているのか
逃げているのか
どちらが先かわからなくなった
今まで幾つの休憩所を通り過ぎたのだろう
初めて立ち寄った休憩所
初めて置いた荷物
解放感と血の巡りを感じて
視界が広がるのが感動的だった
さてと、と
開けた荷物の中身は
腐った食料
濁った水
カビの生えた着替えに
小さな箱に入った宝の鍵と
ぼんやり書かれた宝の地図
これは……
私の背負っていたものは
誰かのための荷物では無く
金品財宝でもなく
小さな可能性と
無邪気な好奇心だった
なぜ気付かなかったのだろう
なぜ忘れていたのだろう
それは始まりの地で想い描いた夢
ワクワクしながら準備した旅立ちの荷物
その想いが重い荷物へと変わっていた
休憩所に立ち寄るのが前提だったのに
そんな事も忘れて
水も食料も着替えも
無駄にしてしまった
たまには荷物を置いて
中身を確認しないといけないのだな
この休憩所はいい所だ
しばらくここで次の旅立ちの準備をしよう
温かいお茶を啜り
久方ぶりの深呼吸をして
気持ちの良いため息をついた