しろんのブログ

詩集と写真

春隣

冬が終わる

凍えそうで
少しだけ寂しい季節を

人は光で
祝いで
愛で

彩りを付けていく

こんなに寒いからこそ

空から降る雪が
天使に見えて
華に見えて
優しさに見えた


あなたの体温がよく分かるのも
冬のせい

寄り添う理由も
冬のせい

こんなに心が温かくなるのは
あなたのせい

冬が終わる


春が芽吹く
桜花爛漫の世界が広がっていく

でも
どうか

どうか
この雪だけは残しておいて


間もなく溶けてなくなってしまうのだけれど
最後の1滴が空へ戻るまで

どうか大事に
この想いと思い出と一緒に
抱きしめていたいの

愛に理由なんて

ご飯を食べながら
涙ぐむ君

どうしたのかと聞かなくても
わかってるよ


毎日の辛いに耐えて
逃げ出したくても
どうしても逃げられなくて

擦り切れそうな心を擦りながら
つま先をぼんやり眺めながら家路に着く

ボロボロで穴だらけの心の扉を
必死に閉じて
一日中
毎日毎日

心を守ってきたんだね



家に着いて
出てきた心は
とても怯えていて
ひりつく警戒心がとても悲しく見えた


抱きしめると震える心
慰めると溢れる涙

どれだけの我慢をしてきたのだろう


君の心は僕には分からないかもしれない
理解なんて出来ていないかもしれない

でも
それでも僕は
泣いている君を
震える君を
傷付いている君を

放ってはおけないんだ


君を抱きしめる理由は必要かな



必要ならこの口付けでわからせてあげる

元々綺麗な君だから

傷付いた数だけ人を愛してた

裏切られた数だけ人を信じてた

泣いた数だけ愛していた


理不尽に痛ぶられるのはいつも綺麗な心

綺麗なものは汚されるの?
穢されるの?

傷の分だけ強くなるわけじゃない
涙の分だけ優しくなるわけじゃない

強かったから傷付けられて
優しいから裏切られて
泣くほどに人を好きだった

ただそれだけなのに


辛い過去があるから優しくなったわけじゃないの
悲しい過去があるから強くなったわけじゃないの

あなたは元々美しく気高い


それを守るために
むき出した牙も
刻んだ爪痕も
それでよかったんだ


周りは色々言うかもしれない
言われたかもしれないけど

白く半透明なあなたの心を守ってきたのは
紛れもなくあなただから

見つけた

大衆の中で呟いた
誰にも聞こえないように小さな声で

助けてと呟いた

誰かに頼らないと生きていけないのに
誰かに頼るのがとても怖かった
生きるのが怖かった


自分は悪くないとわかっているのに
悪くない事が悪いようで

何か悪い事を見つけとうと
目に止まったのは
自分の存在だった


声にならない声を
伸ばすたびに傷が付く腕も
震える足も
止まらない心臓も

全てがあなた自身なんだ

怖かったね
もう大丈夫だよ
独りじゃない

私がそう言われたかったから

その言葉で

言われたかった言葉で

あなたの全てを包みたい

千紫万紅

小さな手のひらに
溢れんばかりの花の種

ニコニコしながらみんなに配っていく
渡す度に優しい言葉をかけながら

歩く度に希望の歌を歌いながら

笑顔の人にも
落ち込んでいる人にも
顔をぐしゃぐしゃにして怒っている人にも

必ず一つずつ花の種を渡していった


時にはこんなモノと罵られ
時にはもっとくれと集られ
時には偽善者と囁かれる



花の種が芽を出す理由は様々で

それは涙だったり
笑顔だったり
憎しみだったり
ため息だったり

どんな理由でも
芽が出る

誰かに渡す前に
芽が出てしまった彼女の花
その理由は一体なんだったのだろうか


彼女の手のひらから零れた種達が
色とりどりの花を咲かせたのは
何故なのだろうか

千紫万紅の感情の花畑

それはきっとあなたの中にもあるのでしょうね

積み上がる絶望の墓に添える大輪の花

目を開ける

自分が生きているんだって実感する

この世は地獄だと呟く人がいた

地獄の罰がこの世ならば
私は前世にどれだけの罪を犯したのだろう

この世が幸せと云う人は
地獄の中にどんな光を見つけたのだろう


貫かれた喉
切れた頭上の糸
汚れた手

私には光など見えなかった

私に残るのは

合わせた手と
擦り切れた膝小僧
血の滲んだ額

それだけだった


天に還り戻らない所をみると
あなたはさぞ幸せに過ごしているのでしょうね

そんな下衆の極まれり戯言を抜かす


それでも見返りが欲しかったのだ

こんなにも耐えたその報いを
こんな私にも世の優しさが欲しいと

そう想わずにはいられないほど
余裕がない私に

誰かがくれる1輪の花
集まり揃った大輪の花

それは只の愚かな私に送られた
救いの言の花

それはこんな私に有り難し
救いの言葉

平に
平に感謝を

一心の心で伝え申し上げる
ありがとう

人生が長い長い旅ならば

重い重い
背負って歩いて

どこまでもどこまでも歩いていく


先の先などは見えなくて

ただただ
右の足より前に
左の足より前に
それを繰り返して

その繰り返しに意味があるのかと
独り言のように自分に問いかけては

数歩先の崖の底を覗きたくなる
真っ暗なのは知っている

ただただ
この背負った荷物に責任を押し付けて
不幸な事故だったと
あるいは独りで背負っていたんだね、可哀想にと

そして1番は……いや、止めておこう


崖を眺めすぎたのか
崖の向かいにある休憩所には気付かないまま
だいぶ歩みを進めてきた

足が痛い
1歩を踏み出す
一瞬片足になる
その瞬間がたまらなく怖くなり

引きずるように
ずるずると
じりじりと

考えがまとまらないまま
まるで身に覚えがない責任感に追いかけられていた


目指しているのか
逃げているのか
どちらが先かわからなくなった


今まで幾つの休憩所を通り過ぎたのだろう

初めて立ち寄った休憩所

初めて置いた荷物

解放感と血の巡りを感じて
視界が広がるのが感動的だった


さてと、と
開けた荷物の中身は

腐った食料
濁った水
カビの生えた着替えに

小さな箱に入った宝の鍵と
ぼんやり書かれた宝の地図


これは……


私の背負っていたものは

誰かのための荷物では無く
金品財宝でもなく

小さな可能性と
無邪気な好奇心だった

なぜ気付かなかったのだろう
なぜ忘れていたのだろう

それは始まりの地で想い描いた夢
ワクワクしながら準備した旅立ちの荷物

その想いが重い荷物へと変わっていた


休憩所に立ち寄るのが前提だったのに
そんな事も忘れて
水も食料も着替えも
無駄にしてしまった

たまには荷物を置いて
中身を確認しないといけないのだな


この休憩所はいい所だ
しばらくここで次の旅立ちの準備をしよう

温かいお茶を啜り
久方ぶりの深呼吸をして

気持ちの良いため息をついた