しろんのブログ

詩集と写真

その花は、時を選ばず優しく咲く

手放してから
手に残った温かさが初めてわかる

 

何か無くしたはずなのに
記憶を遮られるかのように
それが何かを思い出せない

 

正解も不正解も経験してきた

でもそれが正しいのか今も分からずにいるんだ

 

壮大に広がる草原に

黄金とも見間違える太陽の光に

 

ポツリと立った自分が独り

 

自分の心の種はどんな水をあげれば芽を出すのだろう

知ってるはずなのに

この手には無かったんだ

 

果ての見えない草原の果てには

探していたものが見つかると

そう信じて歩いてきた

 

いよいよ疲れて腰を下ろしたその場所に

悪戯に笑う花があった

少しだけ下を向いた花

 

その花の足元だけ

乾いた土だった

 

手持ちの水筒の水をあげてみる

最初は染み込まなかった水筒の水を

土はゆっくりゆっくり吸い込んでいく

 

ふわっとその花が見上げた先に

自分の心の種があった

 

やっと見つけたと言わんばかりに

ゆっくり割れて顔を出した芽

 

探していたものはこんなにも近くにあったんだ

探していたものは笑顔だと

 

やっと気付いたんだ

 

 

 

 

 

 

繋がり輝く祝福の音色

あなたが見つけた可憐で美しい花は

きっと安心や

優しさや

居場所を感じる花なんだと思う

 

もっと近くで見たい

声をかけてあげたい

時には励ましてあげたい

 

そう思っても

優しいあなたは

ついつい引っ込み思案になってしまう

 

それでもね

この場所に集まる人達は

みんな優しいんだ

 

愛した花から受け取った

優しい光を

隣の人、また隣の人へ渡していく

 

生きていることが怖くなくなるように

繋いでいく

それはあなたにも繋がっていく

 

初めは怖いよね

ドキドキするよね

 

受け入れてもらえるはずないって

思ってしまうよね

 

でも大丈夫

 

その手のひらに落ちてきた優しい祝福は

あなたの為に降りてきたんだから

 

そっと握ってもいいんだよ

 

あなたと合わさったその祝福は

また誰かの手のひらに届くのだから

贈る言葉は春光のようにありたい

言の葉に心を包み

あなたに贈る

 

有限な心だからこそ

この心はあなたに贈りたい

 

あなたの今日を特別にする言葉を

あなたの心をほぐすような言葉を

 

 

凝り固まった心じゃ

誰かに心を配れないから

心を遣えないから

 

古来から続く

言の葉に心を包む贈り物

 

それは行ってらっしゃいだったり

おかえりなさいだったり

 

いただきますだったり

ごちそうさまだったり

 

ありがとうだったり

 

 

それを音で文字で感触で傳えられる喜びを

昔から人は知っていたのかもしれない

 

今日も人から人へ贈り物が伝わる

その包まれた心がとても優しいものでありますように

 

春の宵

夜空がぼんやりと青く染る

 

春の夜空は星達を冬の星のようにキラキラとは見せてくれない

 

すこし霞ませてしまうんだ

 

それは星達への嫉妬なのか

花への贔屓なのか

 

少しだけ湿った風は人肌のように感じた

 

春の夜は少し意地悪だ

 

 

こんなにも日の光は暖かいのに

夜風は震えるほど寒かった

 

妬みなのか嫉妬なのか

まるで人間らしい春の夜風に

春愁を感じるのは

 

出会いから来る

劣等感や嫉妬や焦り

なのだろうか

 

今夜も

窓をごうごうと叩きながら荒れ狂う春の夜風は

少し甘い匂いがした

 

 

鏡花水月

叫びが聞こえた気がして

振り向いたその先

 

鏡に映った私が居て

「1人になんかさせないで」と叫んでいた

 

苛立つような

嘆くような

食いしばるような

 

絞り出したその願いは

私にしか届いていなかった

 

 

鏡1枚で繋がる

ワタシと私

 

繋ごうと伸ばした手は

冷たくて硬い感触で遮られてしまった

 

置いていかれた感情は

戻りたいと今日も叫んでる

 

 

五月蝿い!と振り上げた拳は

随分前から血だらけになっていた

 

 

もういいんだよ

今度は広げた手の平で

撫でてあげたいんだ

六花の花弁に染められていたくて

静かに揺蕩う水面を見つめてた

 

三日月だけが映る静かな静かな水鏡に

見とれて見惚れて魅せられていく

 

覗き込むと見たくもない自分がいた

石を投げつけ消そうとしても

また ぼやぁと浮かんでくる

 

そうか

私がここに居るから

見たくもない物を見るのか

 

ならばせめてこの水面に身を溶かしたい

せめて貴方のいる水の中に

 

そう想って息を吸い込む

桜の香りがした

 

 

視線を落とせば広がる花筏

私の醜い姿を隠すように

撫でるように

 

散る桜が魅せる百花繚乱

あなたは最後まで鬱くしいのね

 

飛び込めば花弁に纏われるのであろう

 

 

それならば六花の花弁に撫でられていたい

 

それならば皆の灯火に慰められていたい

 

愚かな決意を諦める理由にしたい

 

生殺与奪の戯言を

全て神様のせいにして

 

今は皆に囲まれて眠りたい

ここが1番好きだ

 

貴女が1番好きだ

 

生きる理由はそれでいい

真宵猫

あなたの織った衣に包まれた

どうしようも無く勝手な私を

怒るわけでもない

 

春の夜風は独りではとても寒くて

新緑の木がケタケタと笑っていた

 

真っ暗な闇の中で

虹になる理由を探しては

そもそも光が無いことに気づいた

 

手のひらの光の中にあなたがいた

空を見ないと言ったあなたの言葉が

随分と深く突き刺さった

 

それ以上、足を動かせなくなった

 

 

何度目かの行ってきますは

何度目かのただいまになってしまった

 

こんな愚かな私を

醜い私を

待っていた人がいた

 

有り得ないと思っていた

でも、たしかにそれはあったんだ

 

感謝とか謝罪とか

それよりも先に見えたのは

希望だった

 

そう

希望だった