しろんのブログ

詩集と写真

葛藤

少し前の話

いつも気を張り巡らせていた頃


所作の一つ一つが監察対象だった頃

まとわりつくような
押し当ててくるような

そんな視線のなかで生活していた

食べるものも味が分からなかったから
何でも良かった

景色もモノクロだったから
見渡すことをやめていた

音楽は高低差も緩急もわからなくなっていて
何を聴いても私の中には入ってこなかった

それでも身体は動いていて
まるで当たり前にそこにある機械のように
息を潜めていた

すこしでも変わった事をすれば
注目の的になって
恨みを買って
妬みを買って

息をするのも許しが必要なくらい
叩き落とされていた


今でも思い出すと心が黒くなっていくのがわかる
身体が強ばっていくのがわかる
視線が下に向いていくのがわかる


今では
頼りになる仲間がいて
心を解いてくれる場所がいくつもあって

とても良い方に変わった


それでもね
傷を見返す度に思い出す
カサブタにもならない
剥き出しの傷が
ふと、痛くなる

そんな思いをしている人が
まだまだこの世界には沢山いて
とても身近で
悲しくなる


そんな人達を救えるほどの力は無いけど
今日もそっと
手を差し出す事は許されるのだろうか

綺麗事と言われたこの言葉を
送っても良いのだろうか